Master’s Research
西本昂生
NISHIMOTO Koki
ポストヒューマンに向けたアニメーション作品の制作と研究
Creative and study animation for the Post human
本研究は、ポストヒューマンを主題とした新たな表現の研究である。 Artscapeでは〈ポストヒューマン〉についてこのように説明している。『「ポストヒューマン」とは、文字通り「人間以後(の存在)」のことである。ゆえにもっとも素朴な水準で言えば、「ポストヒューマニズム」という言葉は、機械補綴や人体改造を通じて「人間を超えた存在」を志向する態度として理解される。』 近年ではシンギュラリティ〔技術的特異点〕等のトピックで、このキーワードを通じた人間性の再考が注目されており、SF等の物語作品内でも大きなテーマとして扱われている。しかしながら、ポストヒューマンを主題とした物語は、優れた先見性を持って新しい人類のあり方を描きながらも、紐解けば現代的な人間の視点が強く反映されたものであったと言える。つまり、その作品は人間に理解されることが前提となっており、人間性を求める顛末の物語であるという共通点があった。 これらの問題意識から、これまで以上に、通常の人間ではない〈ポストヒューマン〉からの視点を意識して物語を構築することを構想した。そのことにより、これまでにない〈人間性の再考〉が可能ではないかと考えた。しかし筆者が現代人である以上、純粋なポストヒューマンの視点を持つことは困難であり、これを実現する工夫が必要となった。そこでその工夫として人形アニメーションを主な手法として採用した。この手法は特徴として〈自身の外部化した存在としての人形と対峙する〉という側面を持っているため、〈ポストヒューマンとしての自身〉を投影し、対峙し、思考する装置として有効であると考えた。これを〈ポストヒューマンに向ける行為〉であるとし、本研究では、新たな表現の方法として〈ポストヒューマンに向けた〉アニメーション作品の制作を行うことを試みた。 本論では、まず第1章でポストヒューマン像について、エンハンスメント技術における論点とダナ?ハラウェイのサイボーグ論から考察する。第2章では、ポストヒューマンを主題としたSF映像作品を比較分析しながら、それらが描いてきた人間性と新たな観点について論じる。第3章では、新たな表現の試みとして、制作された修士作品《ライフログアポトーシス》について詳述する。第4章では、《ライフログアポトーシス》で試みた表現について考察する。第5章では、ポストヒューマンを主題とした新たな表現について結論と展望を論じる。 本研究と本制作を以って、新たな人間性の解体と再考に寄与したいと考える。新しい人類と私のために。
This paper explores new creations that deal with the topic of posthumanism. Artscape describes <Posthuman> in this way: “Post-human” literally means “after (being) human. “Therefore, at the simplest level, the term “posthumanism” is understood as an attitude toward “being beyond human beings” through mechanical prosthesis and human body modification. In recent years, reconsidering humanity using this keyword has drawn attention to topics such as the technological singularity, which has become a major theme in narrative works of science fiction. Posthuman stories describe new perspectives on the future of human